上蒲刈島 聴音照射所(特設見張所)





上蒲刈島 聴音照射所(特設見張所)(2007.3.4)




右:全体図



国土地理院の航空写真(MCG629-C22-13、1970年頃)



米軍の航空写真(左:M124-92M、右:M124-90、国土地理院)


上蒲刈島の南東端にある県民の浜の、北東の225mピーク付近に聴音探照所が造られていた。現在は砲台跡として遊歩道と展望台が整備されている。南側の斜面を登る道はかなりきつく、また荒れつつある。西の尾根沿いに登る道は比較的ゆるやかで幅もあるのでこちらを選択した方が良いだろう。また山の北東側に車道が回っているが、その方向へは荒れていても山道が続いていたので(北側と東側の尾根沿いの2ルート)、冬の間なら鎌鉈くらいで何とかなりそうである。





三角点付近





左:兵舎Cの西側、右:兵舎Cの北西隅にある水槽



左:兵舎Cの南側の入口を西側から、右:兵舎Cの北東を北側から



左:兵舎Cの北東を北側から、右:同左内部



左:兵舎Cの北東隅、右:兵舎Cの南東を南側から



左:兵舎Cの西側の平坦面、右:兵舎Cから展望台を望む



左:円形窪地A、右:Aの中心にあるコンクリート基礎



左:Aの東側を北から、右:Aを東下から



左:Aの北西に伸びる1列に並んだレンガとコンクリート、右:Aの北側の尾根にある海軍の標柱





遊歩道の北側の終点に、兵舎Cがある。よく見るレンガ製の兵舎で、殆ど崩れて藪に飲まれているが、北東の一角だけ屋根が残っており、中は物置のようになっている。兵舎の東側は斜面を切り欠いており、西側は平坦地が突き出している。西側の平坦面の南側は一段低い小さな平坦地になっている。

兵舎Cの北側は小山になっており、三角点の北東側に円形窪地Aがある。内径約5mで、中心には直径140cmのコンクリート基礎がある。コンクリート基礎には6本のアンカーボルトが植えられており、対角のアンカーボルトの距離は約115cmである。基礎の形から探照灯が据えられていたものと思われる。低いもののしっかりとした土塁が一周しており、北西と南東に出入口が設けられている。
Aの北西側には用途不明のレンガとコンクリートで出来た基礎のようなものが一直線に並んでいる。探照灯用の直流発電機でもあるのかと付近を探してみたが、平坦地らしきものは見つからなかった。




北東下の兵舎平面





左:兵舎のある平坦面B、右:枯草の下には兵舎の残骸があるが見えない


左:斜面下の水槽、右:兵舎の北西隅の水槽



左:兵舎北側の小便溝だが枯草で見えない、右:兵舎北東隅のかまど?付近



左:兵舎の南東隅、右:南側にある水槽



左:兵舎の西側にある水槽、右:兵舎を南側から、枯草で見えない



左:西側にある防空壕、右:防空壕近くの水槽



左:防空壕の近くの石垣、右:平坦地Bの南端付近の土止め



左:平坦地Bの南端から展望台方向へ続く軍道、右:東に伸びる尾根を望む



三角点の東下に広い平坦面Bがある。北半分にはコンクリート製の兵舎の残骸があるが、この兵舎にはトイレや台所、浴槽といった施設がある。西側の斜面には防空壕があるが、崩落しつつある。平坦面Bの南端からは展望台方向へ軍道が伸びている。また逆方向にも道が続いており、東へ伸びる尾根へと向かっている。
手が入っているのか草の量は少ない方だったが、夏に行くと一面草で入れないだろうと思われる。

またEの辺りに兵舎用の大型水槽2基があると思われるのだが、藪なので探索していない。



南側尾根上





左:展望台F、右:展望台から兵舎平坦面B方向を望む



左:円形窪地Gの東側、右:円形窪地Gの内側



左:円形窪地Gを北側から、右:円形窪地Gを南側から



左:円形窪地Hの内部、右:右側の繁みの中にHがある



左:円形窪地H、右:Hの南側の平坦面



左:遊歩道脇の水槽、右:水槽の拡大



左:北西側の遊歩道入口、右:展望台から大平山を望む





判りにくいが、展望台Fの南側に円形窪地Gがある。大きさから聴音機のものと思われるのだが、Gの中心にあるはずのコンクリート基礎は見つからなかった。代わりに中心から少し東側にコンクリートの残骸があったが、板状だったので別のものかもしれない。
尾根の南端付近に、円形窪地Hがある。内径1m程で、遊歩道のすぐ脇にあるのだが藪に埋もれていて判りにくい。一応内側をレンガ組んでモルタルを塗っているので何かの施設だと思うのだが、この付近は畑跡で近くに小屋が建っているので、ただの水槽かもしれない。



北西へ下る遊歩道の脇に、かなり立派なコンクリート製の水槽があった。近くにそれらしい平坦面が無かったので、戦後に作られた畑用のものかもしれない。





一通り探索してみたが、探照灯指示器置き場、発電所と揚水所、兵舎用大型水槽、探照灯用の発電機置き場が見つからなかった。航空写真を見ると西下の傾斜の緩やかな場所に平坦地と建物らしきものが写っているので、発電所はこの辺りかもしれない。南東側の展望台(標高200m線でできた丸の部分)の西側から北東へ向かう道らしきものがあり、もしかしたらこれをたどれば辿り着くのかもしれないが、羊歯に埋もれつつあったので探索はしていない。




日付 呉海軍警備隊戦時日誌及び引渡目録による記事
昭和17年2月 聴音照射所 調査中
昭和17年3月 特設見張所 将来要望
昭和17年8月 特設見張所(丁)工事施工内報済
仮称ヱ式空中聴測装置1、150cm探照灯(管)1
12cm望遠鏡3、7倍稜鏡4
電源装置1、通信装置1
予定内報施本機密第13033号(17.2.4)
電気及工学兵器装備の訓令官房機密第8038号(17.6.27)
施設工事施工内報呉建機密第21号ノ608(17.8.27)
訓令資料提出呉鎮機密第60号ノ1326(17.7.8)
施工内報に依る竣工予定(17.3.31)
工事中
昭和17年9月 特設見張所(照聴所)、丁乙、工事中
昭和17年11月 照聴所工事中
昭和17年12月 照聴所工事中
昭和18年1月 照聴所工事中
照聴所(丁)(第1砲台群)工事中
昭和18年2月 照聴所工事中
昭和18年3月 照聴所工事中
昭和18年4月 照聴所工事中
昭和18年5月 照聴所工事中
昭和18年6月 照聴所工事中
昭和18年7月 官房艦機密3560号(18.7.15)、電気及工学兵器装備工事完成期変更の件通知接受す
昭和18年9月 施本機密工第1559号(18.8.14)
板城村その他特設見張所(丁)施設工事要領変更の件通牒
変更完成期(18.8.31)
昭和18年10月 照聴所工事中
昭和18年11月 照聴所工事中
昭和19年3月 官房機密第10508号の訓令により工事中の照聴所完成
昭和19年6月 既設照聴所
昭和19年7月 既設照聴所
昭和19年8月 既設照聴所
昭和19年9月 既設照聴所
昭和19年10月 既設照聴所、150cm探照灯1、空中聴測装置1
昭和19年11月 150cm探照灯1、空中聴測装置1 完備
昭和19年12月 150cm探照灯1、空中聴測装置1 完備
昭和20年1月 150cm探照灯1、空中聴測装置1 完備
昭和20年2月 150cm探照灯1、空中聴測装置1 完備
昭和20年8月31日 引渡:
96式150cm探照灯及び同管制器、付属品補用品共、電動直流発電機 1基
仮称ヱ式空中聴測装置、付属品補用品共 1基
ディーゼル交流発電機陸上用40KVA220V三相60KVA配付 1基
建築物 兵舎1、其ノ他付属施設3

用地:6611m2、建物:198m2
用地:9918m2、建物:370m2(上蒲刈島特設見張所)





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